最近よく耳にする『フードバンク』、知っていますか?
これは、家庭や企業から余った食料を集め、それを必要としている人々や団体へ届ける取り組みです。

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本インタビュー企画では、そんな食料支援活動の最前線で活躍する方々に焦点を当て、インタビューをおこなっています。5回目となる今回は、北の大地は北海道、札幌に拠点を置く「フードバンクイコロさっぽろ」の代表、片岡 有喜子さんにお話を伺いました。
🔗 フードバンクイコロさっぽろ
活動場所・拠点:北海道札幌市
活動を始めたきっかけは何でしたか?



活動を始めたきっかけについて教えていただけますか?



率直に言うと、当時は自覚はなかったのですが、
経済的に困窮していたことが大きな要因でした。
私が大学を卒業した時期は、まさに就職氷河期で、
銀行や証券会社が相次いで破綻し、企業の採用がほぼゼロの年でした。



かなり厳しい状況だったのですね。



はい。「努力すれば報われる」と信じていましたが、現実は違いました。特に女性の大卒者の採用はほぼなく、周囲も就職に苦労していました。
当時、採用を続けている企業はブラック企業が多く、
正社員になれないことは『悪』とされていました。
そんなプレッシャーの中で、私自身も非常に厳しい環境に身を置くことになり、精神的に追い込まれた時期もありました。



そのような経験が、活動の原点になったのですね。



そうですね。さらに、私の同級生の中には精神的な負担が原因で自ら命を絶った人もいました。
その事実が、私の中で大きな衝撃となりました。
加えて、私自身も正規雇用と非正規雇が入れ替わりになり、過酷な職場環境で苦労する日々が続きました。



その後、どのように現在の活動に繋がっていったのでしょうか?



転機の一つは、出産でした。
出産後は医療や福祉のお世話になりながら子どもの育児を行いました。支えてくれた方々のおかげで、何とか乗り越えられたという実感があります。40歳になったとき、今度は自分が誰かを支える側になりたいと強く思うようになりました。



具体的にはどのような形で社会に貢献したいと考えたのでしょうか?



私は北海道・十勝で幼少期を過ごし、食の生産地の中で育ちました。
父の仕事の関係で食品加工の現場を身近に見ていたため、自然と「食」の大切さを意識するようになりました。
そんな経験から、食料支援を通じて困窮者を助ける活動に関心を持ち、
フードバンクの設立を考えました。



フードバンクの設立を決意されたのですね。



はい!設立当時、札幌にはすでに3つのフードバンクがありましたが、
100万人都市にはまだ足りないと感じました。
そこで、誰かからの支援を待つのではなく、自分で一から設立することを決めたのです。



設立当初はどのような体制だったのでしょうか?



専門的な知識を持つ友人がバックアップしてくれましたが、皆、仕事を持っていたため、実際に動くのはほぼ私一人でした。
少しずつボランティアが増え、活動の規模も拡大していきました。最初の2年間は必死に取り組みました。次第に仲間も増え、今では多くの方と共に活動を続けています。


現在取り組んていることについて教えてください



現在どのような活動をされていますか?



私たちは、「フードバンク」を中心に活動しています。
主な役割は、福祉施設や団体に食品を提供することですが、困窮者の方々に直接食品を届ける「フードパントリー」という活動も行っています。
例えば、毎月開催する「0円マーケット」では、約40世帯に食品を手渡しで提供しています。
また、北海道全域を対象に、個人世帯向けに食品を送る活動も行っています。さらに、時折調理イベントを開き、食育活動にも取り組んでいます。



0円マーケットについて詳しく教えていただきたいです!



0円マーケットは札幌市内の公共施設などをお借りして、無料で食品を提供するイベントです。
できるだけ多くの方にお渡しできるように、生活応援小包プロジェクトを受けていない世帯や、18歳以下のお子さんがいる家庭に向けてお渡ししています。





0円マーケット以外には、どのようなイベントを行っていますか?



その他には、他の団体と協力して、様々なイベントや活動を行っています。
例えば、アドバコムさんが運営する「環境広場」に参加したり、
環境情報誌「エコチル」に記事を掲載していただいたりすることで、
フードバンクを知らない方々にも情報を届けています。
また、昨年のゴールデンウィークには、「しんぐるまざあず・ふぉーらむ北海道」と共同で大規模なイベントを開催しました。
音楽演奏や風船アートなどの楽しい企画を提供し、無料で誰でも入場できるカフェスペースも設け、参加者がお金をかけずに長時間楽しめるイベントになりました。





他にはどのような活動をされていますか?



私たちは、「北海道フードバンクネットワーク」というものを運営しており、他のフードバンクと情報交換や協力を行っています。
現在は15団体が加盟しており、私たちはその事務局を担当しています。
ネットワークの目的は、食品や情報の平準化を図り、孤立しやすい団体同士が気軽に相談できる場を作ることです。
また、食品や物資の寄贈を増やすために、協力し合っています。



ネットワーク化されたことにより、何か変わったことはありましたか?



フードバンク間での情報共有がよりスムーズになった点が大きな変化ですね。
例えば、LINEグループやメールを通じて、寄贈の情報や困りごとの共有ができるようになりました。
これにより、遠方のフードバンクでも情報を迅速に得られるようになり、
より効率的に支援を行えるようになりました。



フードバンクで寄贈される食品には、どのようなものが多いのでしょうか?



寄贈される食品は、スーパーで販売されているほぼすべての食品と言っていいでしょう。
例えば、業務用の大きな焼肉のタレなどは福祉施設向けに、
家庭向けには通常の食卓に上るような調味料や食材が多いです。
食品は、個別の家庭や施設に合わせて分けてお渡ししています。



今後、どのようなイベントや活動を行っていきたいと考えていますか?



私は、色々な方のお話を直接聞くのが好きなんですよ。
動画で見るのと実際にその人から直接話を聞くことには大きな違いがあると思うんです。
だから、そういったいろんな経験を持っている人たちのお話を聞ける会があれば、とても楽しいだろうなと思っています。
最終的に目指す社会像とは?



最終的に目指したい社会像とはどのようなものでしょうか?



「食のセーフティーネットの構築」が最も大きな目標です。
日本には、生活保護という制度がありますが、それに漏れてしまう人たちがいるんです。
例えば、生活保護を申請できる条件を満たしていない方々や、他の福祉制度にもカバーされない方々がいます。
そのような人たちに、少なくとも食べ物が届く社会を作りたいです。



セーフティーネットというと、確かに生活保護などが当てはまると思います。
正直、私はその制度には詳しくないのですが、やはり、当てはまるかどうかのラインはかなり厳しいのでしょうか?



そうですね。生活保護は、申請から支給までには時間がかかり、その間の生活が非常に厳しいんです。
申請後、支給されるまでに2週間ほどかかることが多いのですが、この期間中に所持金がほとんどなく、ライフラインが止まっていることもあります。
また、最初に支給される2万円は電気や暖房費用に使わざるを得ないため、食費はフードバンクなどで補うことになります。
生活保護が必要な人が十分に支援を受けられない状況は問題であり、
フードバンクなどの支援機関などで補助を行うことが重要です。
活動で感じている課題



現在、活動を行う中で特に課題に感じていることは何でしょうか?



人材不足ですね。
どこも同じ状況だとは思いますが、やはり悩ましい問題です。倉庫業務についてはスタッフがしっかりと配置されているので回っていますが、事務作業や企業訪問をして食品提供の交渉をするような事務局の人材が不足しています。
採用活動は行っているのですが、応募者は私より上の世代の方が多く、団体の存続を考えると、若い世代の方々にぜひ参加していただきたいと思っています。
しかし、それがなかなか難しいのが現状です。



コロナ禍ではどのような影響がありましたか?



コロナ禍では、非正規雇用の方々が解雇されたり、精神的な負担から働けなくなったりするケースが非常に多く見られました。
一方で、有事の際にはボランティアが急増する傾向があります。『何かしなければ』という気持ちになる方が多く、私たちの活動でも一時的にボランティア登録者が70名を超えるほどでした。
また、寄付金や助成金も多く集まりました。特にコロナ対策に特化した助成金が数多く出回り、
資金的な支援を受けることができました。忙しさはありましたが、人もお金も集まり、活動を拡大することができた時期でした。



では、現在の状況はどうでしょうか?



今の方が厳しいですね。
コロナ禍が落ち着いたことで『もう大丈夫でしょう』という雰囲気になり、助成金の多くが終了してしまいました。
さらに、物価高の影響もあり、支援が必要な方々が増えているにもかかわらず、支援に使える資金も人材も減少しています。
特に困窮者支援に関しては、
以前はあった非課税世帯向けの支援がほとんど実施されておらず、
物価高による影響も大きいです。
例えば、お米の価格が上がっていることで、私たちが支援できる量も限られます。
団体としても、活動を維持するための助成金や補助金の確保が難しくなっており、今が最も厳しい時期だと感じています。


学生へのメッセージ



学生に向けて伝えたいメッセージはありますか?



これは学生だけに限った話では無いですが、
身近にある困窮に目を向けてみてほしいです。
具体的な事例としては、
● 困窮している子供が7人に1人はいる現状
● 十分な暖を取れないご老人が身近にいる現状



将来どんな仕事に就いたとしても、
隣人など身近な人たちを大切にして、
皆さんなりの方法で助けあえるよう意識してみて欲しいです。
最後に伝えたいこと



最後に、
これだけは伝えたいことはありますか?



私たちは子供から大人まで幅広い年齢層の困窮者支援を行っています。
皆さんには大人に対する困窮者支援や親の貧困に関して、
困窮者が直面している状況は自己責任だけでは解決できない場合が多い
ことを理解していただけると幸いです。
編集後記
第5回目となる「笑顔を運ぶ人たち」、いかがでしたか?
今回は、北海道札幌市を拠点に活動する「フードバンクイコロ札幌」の片岡有喜子さんにお話を伺いました。経済的に厳しい状況を経験し、そこから「支援する側になりたい」との思いを抱き、フードバンクの設立に至った片岡さん。歩んできた道のりや、活動にかける想いを聞くことで、改めて「食」の持つ力や、支援を必要とする人々に寄り添うことの大切さを感じました。
「フードバンク」という言葉は近年広まりつつありますが、実際にどのような活動が行われているのか、具体的なイメージを持つことが難しい方もいるかもしれません。今回のインタビューを通じて、フードバンクの仕組みや支援の現場を少しでも身近に感じていただけたなら嬉しいです。
食べ物を無駄にせず、必要としている人に届ける。そのシンプルな行動が、誰かの未来を変える力になる。そんな想いが、このインタビューを読んだ皆さんにも届いていれば幸いです。
次回は、「関東」で食糧支援をしている方のインタビューを公開します!次回もお楽しみに〜!
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