日本では、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品を「食品ロス」と呼んでいます。
解決すべき重要な社会課題の1つとして、近年はメディアで取り上げられる機会が増えてきたように感じます。
この記事では、そんな食品ロスの中でも「家庭で発生してしまうもの」に焦点を当てて、ロスを減らす方法を紹介していきます。
データから見る食品ロス
日本のロスの現状
農林水産省が2023年6月21日に公表した推計値によれば、令和4年度(2022年度)に発生した食品ロスは472万トンにのぼります。いきなり「万トン」なんて大きい単位を出されてもピンとこないと思うので、身近なものに換算してみることにしましょう。
例えば、水が入った500mlのペットボトル。472万トンは、ペットボトル94.4億本分の重さに匹敵します。この数字からも、とてつもない量のロスが発生していることが伺えますね。
※水の重量を1ml=1gと換算して計算しています
この「94.4億」という数字を日本の人口で割ってみると、「75.552……」という数字が導かれます。つまり、発生する食品ロスの「重さ」だけに注目するなら、国民一人ひとりが年間約76本のペットボトルを蓋を開けることなく捨てているのと同等だといえるのです。
また、農林水産省では「国民一人あたり、おにぎり約1個のご飯を捨てている」という例えを使って、私たちがどれくらいの量のロスを生み出しているかを分かりやすく表現しています。
食品ロスの種類と量
日本の食品ロスは、家庭で発生する「家庭系食品ロス」と事業を通じて発生する「事業系食品ロス」の2種類に分類されます。令和4年度(2022年度)のデータでは、全体の半数にあたる236万トンが家庭で発生したものだと推計されています。
また、過去11年間の家庭系食品ロスの推移は、下のグラフのようになっています。
上のデータから、2つのことが分かります。
1つは、家庭の食品ロスは年々減ってきていることです。平成24年度に312万トンあったロスは、令和4年度では236万トンまで減少。その差は約76万トンとなり、平均すると1年あたり約7万トン減少しています(年平均減少率は約2.4%)。
もう1つは、家庭系食品ロスが全体に占める割合はほぼ変化していないことです。先ほど述べたように家庭から発生するロスの「量」は減ってきていますが、食品ロス全体に占める「割合」が下がっているわけではありません。
家庭から出るロスの種類
家庭から出るロス、いわゆる家庭系食品ロスは食べ残し・直接廃棄・過剰除去の3つに分類されます。環境省の「食品ロスポータルサイト」には、それぞれの説明が下のように記載されています。
- 食べ残し:食卓にのぼった食品で、食べ切られずに廃棄されたもの
- 直接廃棄:賞味期限切れ等により使用・提供されず、手つかずのまま廃棄されたもの
- 過剰除去:厚くむき過ぎた野菜の皮など、不可食部分を除去する際に過剰に除去された可食部分
どのくらいの量が発生しているのかを見てみると、直接廃棄が最も多く、食べ残し、過剰廃棄と続くことが分かります。
食品ロスを減らす取り組み
ここまで、公的なデータを用いながら、日本の食品ロスの現状、中でも家庭の食品ロスについて詳しくみてきました。
ここからは、そんな家庭で発生してしまう食品ロスを減らす取り組みを3つご紹介します。
1. 食べ切れる分だけ調理する
この取り組みは「食べ残し」の削減につながるだけではありません。
必要な分だけ調理すると、調理に使われる食材が減るので「過剰除去」を減らすことも期待できます。
また、エネルギーや水の使用量も少なくなるので、地球に優しい取り組みともいえるでしょう。
2. 必要な分だけ購入する
必要な分以上に食材を買ってしまい、全部食べきれなかった。
そんな経験をしたことのある方もいるのではないでしょうか。
買ったのに捨ててしまうとなると、食品ロスを生むだけでなく、お金の無駄遣いにもなってしまいます。
そうならないために、買い物に行く前に「購入メモ」を作成したり、レジを通す前に「本当に必要な商品」なのかを吟味してみるとよいでしょう。空腹の状態で買い物に行かない、というのもいいかもしれません。
必要な分だけ購入することは、「直接廃棄」の削減につながる取り組みです。
3. 不可食部を食べてみる
不可食部とは、野菜や果物の皮や魚の皮など、普通は調理の際に取り除いて捨てる部分のこと。文字面から「食べられない」印象を抱いてしまいがちですが、実は、全く食べられないわけではありません。
例えば、筆者はキウイの皮やイチゴのヘタを捨てずに食べています(他の人に話すとよく驚かれます)し、「野菜の皮ごと調理」なんていうのも耳にすることがあります。
このように「食べられない(不可食)と思われがちだけど、実は食べられる部分」を捨てずに食べると、「過剰除去」を減らすことができます。みなさんもいろいろな不可食部に挑戦してみてはいかがでしょうか?
※じゃがいもの芽など「本当に食べられない」部分もありますので、口にする前にしっかりと調べることを強く推奨します
まとめ
今回は、日本の食品ロスの現状や家庭の食品ロスの種類、食品ロスを減らす取り組みをご紹介しました。
最後に挙げた3つの取組は、数多ある実践のほんの一部にしか過ぎません。
みなさんの生活スタイルに合った「無理なく行えるもの」から実践してみてほしいと思います。
参考文献
◎環境省,「消費者向け情報」,食品ロスポータルサイト,(https://www.env.go.jp/recycle/foodloss/general.html,2024年6月30日取得).
◎環境省,「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和4年度)の公表について」,2024年6月21日,(https://www.env.go.jp/press/press_03332.html,2024年6月30日取得).
◎総務省統計局,「人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)結果の要約」 ,2023年4月12日,(https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2022np/index.html,2024年7月12日取得).◎農林水産省,「令和4年度の事業系食品ロス量が削減目標を達成!」,2024年6月21日,(https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/240621.html,2024年6月30日取得).