最近よく耳にする『フードバンク』、知っていますか?
これは、家庭や企業から余った食料を集め、それを必要としている人々や団体へ届ける取り組みです。
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ぐらくま本インタビュー企画では、そんな食料支援活動の最前線で活躍する方々に焦点を当て、インタビューをおこなっています。9回目となる今回は、神奈川県横浜市に拠点を置く「NPO法人浜っ子南」の代表、下山 洋子さんにお話を伺いました。
🔗 フードバンク浜っ子南
活動場所・拠点:神奈川県横浜市
現在取り組んでいることについて教えてください
戸根現在どのような活動をされていますか?
下山さん私たちは主にフードパントリー、フードデリバリー、フードドライブの3つに取り組んでいます。
フードパントリーは、子どもを育てるひとり親を対象にしています。


戸根フードデリバリーとはどのような活動なのですか?
下山さんフードデリバリーは地域の子供食堂や学習支援施設、放課後デイサービスといった子供支援をしている団体に子供が喜ぶような食品や飲み物を提供する活動です。特にお米の値段が高いので、お米の必要性が高まっています。
戸根寄付していただく食品はどのようなものが多いですか?
下山さん圧倒的に防災備蓄食品が多いです。防災備蓄品を取り換えるときに、余った食品を寄付していただいています。例えば、アルファ米や缶詰、水などです。また、地域の企業のパンや野菜、果物を寄付していただいています。フードパントリーの提供食品は、主食(お米やパスタ)と副食(缶詰やレトルト食品)、お菓子、飲料です。食事の栄養バランスを考えると、たんぱく質を補える食品や青果などを寄付していただけるとありがたいです。

戸根主にどのような方から寄付をしていただいていますか?
下山さん私たちの活動に共感してくださった方に寄付していただいています。食品を扱う企業に寄付していただきたいのですが、全国的に食品関連の企業からの寄付が減ってきています。地域のフードバンクであるので、個人の方からの寄付が多いです。
活動を始めたきっかけは何でしたか?
戸根設立した経緯やきっかけについてお伺いできますか?
下山さん2020年6月に設立しました。コロナ禍の中で、ひとり親家庭が大変な状況にあることを目の当たりにしました。子育てをしながら遠方まで食料を確保しに行くのは大きな負担だと感じ、地元で食料を配ることができる存在になりたいと思ったことが活動を始めたきっかけです。
活動で感じている課題
内野先日は、ボランティアとして浜っ子南さんのフードパントリーに参加させていただきました。貴重な体験ができたと感じています。ありがとうございました。
内野今回、私からは3つほど質問させていただこうと思います。
内野まずは、現在活動を行う中で特に課題に感じていることを教えてください!
下山さん課題は大きく分けて3つあります。
下山さん1つ目は、食品の安定確保です。フードパントリーの活動は継続性が求められるため、途中でやめるという選択はできません。私たちの支援を必要としている方々がいる以上、安定して食品を届ける責任があります。しかし、実際には寄付だけでは賄いきれないことが多く、不足分は助成金を活用して食品を購入しています。ただ、助成金も毎回必ず得られるわけではなく、また寄付いただく食品の種類や量、タイミングも寄付元の都合によって変わるため、必要なときに必要なものをそろえるのが難しいという現状があります。 さらに、食品のマッチングの調整も難しいです。
下山さん2つ目が、活動資金です。食品を集めるだけではなく、それを保管するための倉庫が必要ですし、運ぶための車やボランティアさんのガソリン代など、運営にはさまざまな費用がかかります。 この活動は収益が出るわけではないので、そうした費用をどうやって賄うかが、悩みになっています。
下山さん最後は人の問題ですね。活動を始めた方が、ずっと関わり続けられるとは限らないので、長く続けられるように法人化しました。人が入れ替わってもスムーズに活動が続けられる仕組みづくりは、今も大きな課題になっています。
内野ありがとうございます。確かにフードバンクのような活動は、お金を生み出す仕組みではない分、続けるための工夫が必要になってきますよね。
内野では、今挙げていただいた3つの課題について、「こうすれば解決できるかも」と思われるようなアイデアや取り組みはありますか?
下山さんそうですね、「これを1つやれば解決する」ということはないと思っています。
下山さん食品の確保については、いくつかのルートを組み合わせて対応しています。たとえば、私たちのような小規模なフ ードバンクが、もう少し規模の大きい中間支援的なフードバンクさんから食品を分けてもらうこともあります。企業や市民の方から直接いただくこともありますし、行政が食品ロス削減の一環として、フードバンクと企業をつないでくれる場合もあります。こうした多様な連携をうまく活用し、さらに強化していくことが大切だと思っています。
最終的に目指す社会像とは?
内野下山さんの考える最終的に目指したい社会像とはどのようなものでしょうか?
下山さん私たちのビジョンでもある、「食を分かち合い、助け合い、支え合える社会」です。
この言葉は短くまとめていますが、私たちが本当に目指しているのは、食品ロスがなくなり、誰もが十分に食べられる社会。つまり、最終的にはフードバンクが必要なくなる世界です。
ただ食べ物を渡すだけでなく、人と人とのつながりを大切にして、「困ったときに助け合える関係」が築けるような場を、これからもつくっていきたいと思っています。
内野以前、浜っこ南さんの活動に参加した時に、「ただ食品を渡すだけじゃないんだ」と気づいてとても印象に残りました。
特に、会場にあった浜っ子カフェが印象的でしたが、どのように運営されているのでしょうか?
下山さん浜っ子カフェは、安心して過ごせるような場を作りたいという思いから、お茶とお菓子を用意し、自然な会話が生まれるのを見守る、そんなスタイルで運営しています。これまでに「同じ立場の人と話したい」「孤立を感じている」といった声が寄せられており、せめてパントリーに来たときだけでも気軽に会話ができる場を提供したいと、この取り組みを続けてきました。人とのつながりが少しでも心の支えになれれば良いなと思っています。
学生へのメッセージ
吉井学生に向けて伝えたいメッセージはありますか?
下山さんぜひ、いろんなことを学んで経験してください。その中で、フードバンクにも関心を持ってもらえたら嬉しいです。世界の出来事と切り離さず、広い視野で行動してほしいですね。
最後に伝えたいこと
吉井最後に、これだけは伝えたいことはありますか?
下山さん人は食べなければ生きていけません。だからこそ、食の問題にはあらゆる社会問題が詰まっていると思うんです。食をきっかけに、私たちと一緒にいろんな課題に向き合っていけたら嬉しいです。
編集後記
今回は、神奈川県横浜市を拠点に活動する「特定非営利活動法人フードバンク浜っ子南」の下山洋子さんにお話を伺いました。ごはんが食べられなくて困っている親子をなくしたいというお気持ちのもと、ひとり親家庭に向けた支援活動を精力的にされています。フードパントリーで食料支援を行うだけでなく、浜っ子カフェを併設することで、支援を受ける方々にとっての安らぎの場となっているという点が特に印象的でした。ただ食品を配るのではなく、利用者と会話をすることで、人との繋がりや助け合いをするという関係性を生み出しているのだと学びました。
「フードロスがなくなり、人々が十分に食事をとれる世界を目指している」とお伺いしました。みなさんはフードロスをなくすためにどのようなことをしていますか?食べ残しをしないこと、食べられる分だけを買うことなど、様々な対策があると思います。私たちひとりひとりの配慮が、食べ物を待っている人たちの支援に繋がるのです。みなさんが思うフードロス対策をぜひやってみてくださいね。
次回もお楽しみに!!










