食品のロス削減の活動の1つに「フードバンク」がある。
フードバンクとは、家庭や企業から余った食料を集め、それを必要とする人や場所に配る活動のこと。
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そんな食料支援の最前線に立ち、私たちに笑顔をもたらす活動に従事する方々にスポットライトを当てるのが、このインタビュー企画である。
記念すべき第一回目は、一般社団法人フードバンクながはまで代表理事を務める、前田 智博(まえだ ともひろ)さんにお話を伺った。
今回お話を伺った人
まずは、取り組んでいることについて教えてください!
私たち「フードバンクながはま」は、滋賀県長浜市を拠点に活動する団体です。
長浜市の社会福祉協議会さん、いわゆる「社協」の事務所を丸々一個お借りして 、そこを食料保管や配布場所として活用しています。
設立からしばらくは、 私と副代表の自宅の空いてる部屋に食料を置いていたんですが、徐々に扱う食品の量が増えてきたというのもあって、2023年から今の場所を使っています。
活動を始めたきっかけは何でしたか?
実は僕が始めたわけではないんですよね(笑)
僕が入る前から組織自体はあって、そこでは子供食堂をやっていました。
子供食堂のネットワークを介して、食材を各方面からいただいていたみたいなんですが、いっぱいいただきすぎて食材が余ることがあったみたいで……。
「この余っている食材を、どうにかして必要な人に渡せないか」と思案した結果、2018年に「フードバンクながはま」が創設されたと聞いてます。
僕が団体に入ったのは、団体設立から2年後の2020年です。
そこから徐々に、子供食堂で余るものだけではなく、家庭や企業からいただいた、ロス間近の食料も配るという今のスタイルに変わっていきました。
フードバンクは「食料を必要とする人や場所に届ける」活動です。
ながはまさんでは、どのような食料を、どこに届けているのですか?
当法人は、支援する食料全体の6割を、地域のみなさんからのフードドライブでまかなっています。
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フードドライブのケースには、 野菜やお米、乾麺、生鮮食品だとお肉が多く入っている印象があります。
あとは、シーズンを過ぎた商品も多いですね。
例えば、今(取材時:3月上旬)だったら節分がちょうど終わった時期なので、節分に使ったであろう商品が見受けられます。
残りの4割は企業からいただいたものですね。
印刷ミスをしていたり、賞味期限が間違っていたりする商品を引き取っています。
他には、箱のギザギザしている部分がギザギザしていない【※】という理由で、うちに来る商品もありますね。
【※】規定の形状でないために、捨てられる食品がある。これも「食品ロス」の一部にあたる
ちなみに、昨年は全体で2.6tを回収しました。
内訳は、1位はお米(1,000kg)、2位は飲料系(400kg)となっています。
こうして各所からいただいた食料は、子供食堂や生活に困窮している方、一人親の子育て世帯を中心に配っています。
「食料の配布」以外の取り組みを伺いたいです!
食料以外の支援
私たちは、生活困窮者の方にはしっかりとしたゴール(食料配布を行う期限)を設定して支援にあたっているのですが、支援をしていると、「仕事が見つからない」とか「子育てが苦しい」といった困りごとを耳にすることがあります。
そういう話を受けた時には、その先の支援までおこなっていくことにしています。
仕事の相談であれば、派遣会社やハローワークに相談者を紹介してあげる。
子育てのことであれば、子育て支援課に一緒に行って話を聞く。
といった感じで、相手のニーズに合わせた伴走支援をしていき、最終的には「自立」を目指しています。
ちょうど最近、「仕事が本当に見つからず、明日食べるものもない」と困っている方がいて、勤め先の派遣会社に一緒に伺って、仕事の内容や今後のことを話し合ってきました。
その甲斐もあって、今は安定した職業についているんですが、こういうケースが成功例として挙げられると思います。
炊き出し
年に4回、炊き出しをおこなっています。
始めた理由の1つは、「お米をたくさんいただくこと」です。
地域柄、多くの方にお米をもらうのですが、どうしても余ってしまう分もあって「活用したい」という想いがありました。
もう1つは「今食べられるものがほしいというニーズに応えること」です。
支援先の一人親世帯の方に話を聞くと、「今食べれるものが欲しい」という声があがるんです。
「ご飯を作るんじゃなくて、 とにかく”今”ご飯を食べたいんや」という切実な声です。
余ったお米と支援者のニーズ。
両者を解消する手段として、炊き出しを始めました。
実施する際には、無料の生活相談会も同時開催しています。
そこで家庭の事情や困りごとを話してもらい、必要があれば、行政にその人をつなぎます。
お弁当の配達事業
最近、お弁当の配達事業も始めました。
以前は、地域のお弁当屋さんに発注していたんですが、自分たちで作って渡すことにしたんです。
「食品ロスをうまく活用したい」という気持ちからスタートしたプロジェクトです。
今後の活動は、どのように計画していますか?
フードバンクながはまは、滋賀県の北部地域に限定して活動をしているため、他の地域とのつながりが少ないのが現状です。
今後はつながりを横に広げていきながら、滋賀県全体の食品ロスゼロを目指して活動にまい進していきます。
私たち消費者が「食品ロス削減」のためにできることって、何かあるのでしょうか?
市民のみなさんには、「買いすぎないこと」を意識してもらいたいです。
食材が安いからたくさん買おうと思わずに「必要な分」を「必要なもの」だけ買っていく
これが一番大事だと思います。
そういった一人一人のコツコツとした積み重ねが、大きな課題であるフードロスの解消につながると、僕は信じています。
編集後記
当法人の新たな取り組みとして発足したインタビュー企画。
今回は、以前当法人の活動に携わっていた前田さんに話を伺いました。
お話を通して、前田さんの「食品ロスを減らしたい」という想いの強さを感じました。
フードバンクをおこなうことで食料支援だけではなく、雇用の支援や食品ロスの削減へ向けて取り組まれていることをインタビューを通して感じました。
この取り組みを行う目的の1つに、「地域によるフードバンクの違いや課題を整理する」ことがあります。
日本全国に点在するフードバンク。
その一つ一つを見ていくことで、共通の課題が浮き彫りになり、私たちの目指す「フードバンクの周知」や「フードバンクどうしのつながりの創出」に近づくと考えています。
インタビューの内容は、当法人のHPやSNSでも発信していきます。
フードバンクの周知のため、情報の展開に協力いただけると嬉しいです。