食品のロス削減の活動の1つに「フードバンク」がある。
フードバンクとは、家庭や企業から余った食料を集め、それを必要とする人や場所に配る活動のこと。
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そんな食料支援の最前線に立ち、私たちに笑顔をもたらす活動に従事する方々にスポットライトを当てるのが、このインタビュー企画である。
二回目の今回は、特定非営利活動法人(NPO)日本もったいない食品センターで代表理事を務める、高津 博司(こうず ひろし)さんにお話を伺った。
今回お話を伺った人
まずは、取り組んでいることについて教えてください!
私たち「日本もったいない食品センター」は、「食品ロス」と「貧困問題」の両方を0にすることを目指して、大阪の摂津市を拠点に活動をおこなっています。
取り組んでいることの1つは、ecoeat(エコイート)の運営です。
「食品ロス削減ショップ」として、様々な事業者から集めた「廃棄される予定の食品」を販売しています。
ecoeatではただ商品を販売するのではなく、店員がお客様に対して食品の期限の説明をすることで、期限間近の食品の購入を促します。
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現在は、北は東京から南は沖縄まで、全国に21店舗を展開しています。
今後も拡大していく予定で、すでに新たに6店舗の出店が決まっています。(取材時:2024年4月24日)
その他には、周りのフードバンクさんに対しての指導や支援もおこなっています。
食料支援の専門家として、これまでの活動で得た知見やノウハウを共有しているんです。
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食品ロスを直接的に減らす取組に加えて、啓発により間接的にロスを減らしていくことも大切だと考えています。
大学での講演会やイベントへの登壇、インタビューやメディアの出演などを通して、課題や活動を知ってもらう機会を積極的に創っています。
そもそも、なぜ高津さんは団体を設立されたのでしょうか?
設立の経緯やきっかけを教えてください。
私は20年来、総合商社を経営しています。
総合商社というだけあって、輸入や輸出も含めて、様々な商品を売り買いしているわけですが、食品を取り扱う機会もありました。
その中で、なくなく捨てられてしまう食品を目の当たりにしたんです。
まさに「食品ロス」ですよね。
もちろん会社ですから、利益を出すことが求められます。
そのためには、商品を売る必要があるわけです
仕入れた商品が売れなければ、当然会社にとっては損失になります。
「食品ロス」は、売れる状態にも関わらず捨てられてしまう食品です。
「食品ロス」が生じているこの状況は、大きな「機会ロス」、つまり「利益が出る可能性を潰している」状態でした。
そこにもどかしさを感じていた当時の私は
赤字にならなければいいや
と考えて、収支にマイナスが出ない範囲で余った食品を配り始めたんです。
最初は、会社の近くの子供がいる施設に持っていきました。
今でも覚えているのは、その施設に飴を持っていった時のことです。
飴といっても子供が喜ぶようなものではなく、年配の方が好みそうな黒糖味の飴でした。
それでも、施設の子供達はとても喜んでくれたんですよね。
そうやって貧困の実態を感じながら食料支援を継続しているうちに、社会福祉協議会やフードバンクの方々との関係を築いていき、食料支援への知見を深めていきました。
2015年に始めた活動を2017年2月にNPO法人化し、今に至ります。
会社の中で感じた課題意識を起点に、できる範囲で「食品ロス」削減に動いていったこと。
それが、この団体を設立したきっかけです。
活動で特に課題に感じていることはなんでしょうか?
物流費の削減には、四苦八苦していますね。
例えば、このスマートフォン1つを沖縄に送るとしましょうか。
この時、スマホの代金に加えて、輸送代もかかりますよね。
何を送るにしても、輸送のコストがかかってきます。
この輸送代は、ものの大きさや重さによって変わるものです。
そこで私たちは、一度に大量に食品を輸送することで、1個あたりの輸送代を抑える工夫をしています。
全国各地にあるecoeatも、実はコスト削減に重要な役割を果たしています。
例えば、地方にも「食料支援を必要としている家庭」はたくさんありますよね。
でも、地方にあるecoeatからその家庭に食料を届けるとなると、運送のコストを抑えることができます。
各地域の食料支援のハブを担えるよう、ecoeatをもっと多くの地域に広げたいし、全国に置くことが理想です。
活動を通して、どのような食料をどのくらい集めているのですか?
昨年度は、およそ3,000tの食料を集めました。
集まる食品は、防災用備蓄品や飲料が多いです。
※災害用備蓄品は、政府が公表する「食品ロスの量」には含まれないことから「隠れ食品ロス」とも呼ばれます
あとは、ロングセラーじゃない商品ですね。
ロングセラーの商品ってずっと売れているわけですから、おのずとロスも少なくなる。
言い換えたら、そうでない商品はどれもロスになりやすいということです。
各所から集まってきたこうした食品を、全国各地の支援を必要とする家庭や施設に送っています。
他のフードバンクと比べて「ここが違う!」というポイントはありますか?
まずは、なんといっても規模が違うと思います。
全国で店舗販売と食料支援を展開しているので、フードバンクの規模としては日本一なのではないでしょうか。
あとは知識量。
商社を経営している経験から、他と比べて食品と物流への造詣が深いと思います。
事業としての特徴は大きく2つあって、1つは「積極的に食品の買い取りをしている」ことです。
私たちは様々な企業から余った食料を回収していますが、多くのケースでタダで融通していただくのではなく、こちらからお金を払って買い取っています。
もう1つは、「助成金や補助金に頼らない経営をしている」ことです。
多くのNPOでは、国や地方自治体からいただいたお金を元手に事業を回しています。
決してそれが良くないやり方だとは思いませんが、周りからの補助が打ち切られた途端、事業が立ち行かなくなるリスクを抱えていることも事実です。
私たちはみなさんからの寄付金と、ecoeatでの事業収入で、物流費などの経費を賄っています。
活動ができるだけ長く続けられる、そんな「持続可能な慈善事業」をこれからもおこなっていきたいです。
最終的に目指したい社会はどこにあるのでしょうか?
最初に話したように「食品ロス」と「貧困問題」のどちらも0にすることです。
2つの0と0。
これが、私たちの最終的なゴールです。
ただ、食品ロスを0にすることは難しいと感じる部分があるので、一義的な目標は貧困問題の解消になります。
私たちは学生を中心に運営している団体です。
特に学生に向けて、伝えたいメッセージがあればお願いします!
今、大学に通えているみなさんは、恵まれている。
そのことに自覚的になってほしいですね。
貧困にあえぐ人がたくさんいる世の中で、最低限度以上の生活ができていることに感謝の気持ちをもって生活してほしいと思います。
あとは、実際に取り組んでみることも大切だと思います。
例えば、食料支援に関心があるなら、実際に食料支援の現場に出向いてみる。
自己満足でもいいから、試しにやってみることは大切だと思います。
編集後記
当法人として2回目となるインタビュー企画。
今回は、大阪を拠点に活動を広げている高津さんに話を伺いました。
お話を通じてまず感じたこととして、ここまで事業化出来ていることに少し驚かされました。
非営利団体の方々は、身を切りながら活動している人が多いと思っていましたが、赤字にすらなっていないというこの状況を作り出せている高津さんは、これから先のフードバンクなどのNPO法人としての立ち回りの手本となるでしょう。
そして今回、編集後記を書かせていただいてる私は正直フードバンクなどについて深く理解しているわけではなかったので、実際に活動されている方の内情だったりと実践することで知れるような内容を知れたのは私自身としても大きな一歩になったのではないかと考えています。
インタビューの内容は、当法人のHPやSNSでも発信していきます。
フードバンクの周知のため、情報の展開に協力いただけると嬉しいです。